養育費が支払われる期間の目安
養育費は,未成熟子が社会人として自活するまでに必要とされる費用です。
別居や離婚などにより一方の親が子を引き取る場合,他方の親に対して,離婚前であれば婚姻費用分担(民法760条)等を,離婚後は監護費用(民法766条1項)等を根拠に請求することができます。
養育費支払いの始期は,交渉や調停等で相手方が過去に遡って養育費を支払うことを認める場合は別として,そうでない場合は養育費を請求したときからで,審判では過去に遡っての養育費請求は認められないことがほとんどです。
例えば,離婚時に養育費を定めていれば,離婚したときから養育費をもらうことができますが,離婚後2年たってから養育費を請求する場合,原則として過去2年分の養育費の支払いは認められません。
また,養育費をいつまで支払うかについては,審判等では20歳までとされるのが通常のようですが,任意交渉や調停,和解等では,大学又はこれに準ずる高等教育機関を卒業する月までなどに相手方が合意することもあります。
養育費の支払い方法
養育費の支払いは,毎月の支払い(定期金払)が原則です。
養育費は,比較的長期間にわたる子供の生活を支える費用であり,将来分を一括して受け取って費消してしまうと,子供の生活に支障が生じかねず,お勧めできません。
また,養育費が毎月の支払い(定期金払)の場合は原則として課税されませんが,将来分の養育費を一括して受け取った場合,贈与税が課せられますので,この点からもお勧めできません。
養育費の金額
当事者間で養育費の具体的な金額についての合意が成立した場合,後日養育費の不払いがあったときに備え,口頭の約束だけで終わらせるのではなく,金額その他の内容をできるだけ強制執行認諾文言付の公正証書にしておくべきです。
当事者間で具体的な金額の合意ができない場合,家庭裁判所で行われる調停,審判により金額が決められます。
この場合,実務上は,養育費算定表に基づき決められることが定着しています。
養育費算定表は,子供の人数や年齢と権利者(子供を監護している方の親)と義務者(子供を監護していない方の親)の年収により,支払われるべき養育費の金額の幅を示したものです。
この養育費算定表は,東京家庭裁判所のホームページで公開されています。
養育費の金額の変更
一度養育費の金額が決められた後でも,取決めをした当時予想できなかった事情の変更があった場合,養育費の増額や減額を求める調停・審判を家庭裁判所に申し立てることができます。
もっとも,養育費の金額が変更されるのは,相当程度大きな事情の変更があった場合です。
例としては,子供が大きな病気をして多額の医療費が必要となった場合,失業等で収入が大きく減少した場合などが考えられます。
養育費の不払い
養育費が約束通りに支払われない場合,当事者や弁護士等が内容証明郵便等によって支払いを督促することが一般的です。
それでもなお支払わない場合,給与債権の差し押さえ等の強制執行を行うことになります。
養育費を執行認諾文言付の公正証書で取り決めた場合や,調停,審判,裁判で決められた場合は,すぐに差し押さえをすることができます。
これ以外の場合,審判,訴訟等を提起して決定,判決等を取得してから,強制執行を行うことになります。
なお,養育費の支払いが滞ったため,給与債権の差し押さえを行う場合,未払いの養育費だけでなく,将来支払われる分の養育費についても同時に強制執行を申し立てることができます。
また,給与債権を差し押さえる場合,原則として1/4までしか差し押さえることができませんが,養育費のときは原則として1/2まで差し押さえることができます。